帆足計事件

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帆足計(ほあしけい)事件とは、日本国民の「海外渡航の自由」が憲法でどこまで保障されているのか。そして、国がそれを制限できるのかが争われた憲法上の最重要判例の一つです。(最高裁昭和33年9月10日判決)

戦後間もない時期、冷戦下という特殊な時代背景の中で起きた事件です。


1. 事件の経緯

  • 事案: 1952年、当時衆議院議員だった帆足計氏が、ソ連(現在のロシア)で開催される国際経済会議に出席するため、外務大臣にパスポート(旅券)の発給を申請しました。
  • 拒絶: しかし外務大臣は、旅券法に基づき「日本国の利益または安全を著しく害する行為をする疑いがある」として、パスポートの発給を拒否しました。
  • 提訴: 帆足氏は、この拒否が憲法22条2項の「外国に移住し、又は国籍を離脱する自由」に違反するとして、国を相手に損害賠償を求めました。

2. 争点:海外へ行く自由は憲法にあるか?

憲法22条2項には「外国に移住する自由」は書かれていますが、「旅行(一時的な渡航)の自由」については明記されていません。ここが最大のポイントでした。


3. 最高裁の判断:結論は「合憲」

最高裁は、パスポートの発給拒否を「合憲(憲法違反ではない)」と判断しました。

① 海外渡航の自由の承認

最高裁は、憲法22条2項が「外国に移住する自由」を保障している以上、それよりも制約が少ない「一時的な海外渡航の自由」も、同じように保障されていると認めました。

② 公共の福祉による制限

しかし、この自由は「無制限」ではありません。

  • 海外渡航は、相手国との外交関係や国家の安全に深く関わる。
  • したがって、「公共の福祉」のために、合理的な制限を受けることがある。
  • 今回のように「国の利益を害する恐れ」がある場合の拒否は、公共の福祉による正当な制限の範囲内である。

4. この判例のポイント

  • 権利の導出: 「移住の自由」の規定から、書かれていない「渡航の自由」を導き出した点が重要です。
  • 公共の福祉の適用: 外交的な理由という、政治的判断が強く関わる分野において、国の広い裁量を認めた判決と言えます。

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