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成田新法事件(なりたしんぽうじけん)とは、成田空港の建設を妨害するために作られた過激派の建物(いわゆる「団結小屋」)の使用を制限・禁止する法律が、憲法で保障された「適正手続き(31条)」や「財産権(29条)」に違反しないかが争われた事件です。(最高裁平成4年7月1日判決)
戦後、最も激しい紛争の一つであった「成田闘争」を背景とした、極めて特殊かつ重要な憲法判例です。
1. 「成田新法」とはどんな法律か?
当時の成田空港周辺では、反対派が「団結小屋」を拠点に、空港施設への放火や通信設備の破壊など、過激な妨害活動を繰り返していました。
これを抑え込むために作られたのが成田新法(正式名称:成田国際空港の安全確保に関する緊急措置法)です。この法律は、運輸大臣(当時)が「妨害行為に使われる恐れがある」と判断した建物に対し、使用禁止命令や封鎖を行うことができるという強力なものでした。
2. 争点:なぜ憲法違反だと言われたのか?
原告側(反対派)は、主に以下の2点を訴えました。
- 適正手続きの欠如(憲法31条): 命令を出す前に、相手の言い分を聞く「告知・聴聞(弁明)」の機会が与えられておらず、手続きが不当である。
- 財産権の侵害(憲法29条): 自分の所有物である建物の使用を、大臣の一存で禁じるのは私有財産制度の侵害である。
3. 最高裁の判断:結論は「合憲」
最高裁は、この法律を「合憲(憲法違反ではない)」と判断しました。そのロジックは非常に実践的なものでした。
① 手続きの適正さについて(31条関係)
憲法31条(適正手続き)は、行政手続きにも及ぶと認めつつも、「常に必ず」事前の弁明が必要なわけではないとしました。
- 緊急性: 妨害行為がいつ起きるかわからない緊急事態では、あらかじめ通知すると証拠を隠されたり、さらに過激な行為を招く恐れがある。
- 事後の救済: 命令の後に不服を申し立てるチャンスがあるなら、事前の手続きを省いても憲法違反にはならない。
② 財産権の制限について(29条関係)
- 公共の福祉: 空港の安全運行という「極めて高度な公共の利益」を守るためであれば、必要最小限度の範囲内で財産の使用を制限することは許される。
4. この判例のポイント
この判決の最大の意義は、「行政手続きにおいても、緊急性などの事情があれば、事前の告知・聴聞を省略しても良い」という例外を認めた点にあります。ただし、あくまで「成田空港周辺という異常な事態」を前提とした判断であることには注意が必要です。
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